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科学と技術について日ごろ考えることの私のためのメモ


by itot7227ex

私の宇宙観ー膨張する宇宙

 地球上を3次元で見て採集や狩をすることによって進化してきた人類には信じられないようなことが世紀末から今世紀にかけて実証されつつある。その一つが量子力学の主張する「重ね合わせ」や「量子もつれ」であることは、すでに述べたとおりである。
 このような観点から宇宙の現象を眺めると、もっとも重要なものは「宇宙は膨張する」という概念であろう。これはダーウィンの進化論に相当するもので、進化論がなければ地球における多様な生物の存在が説明できないのと同様、宇宙膨張論がなければ手元の物質や地球や太陽の存在が全く説明できないといえるものである。
では宇宙膨張とはどんな概念であろうか。これまで人類は、「膨張とはもっとも高圧な中心があって、これが周囲のより気圧の低いところに押し出されるもの」だと考えてきた。この膨張とは違って、宇宙膨張には中心がなくあらゆる宇宙空間で生じているものだ。この宇宙膨張によって物質の受ける圧力はどこでも同じであり、人類が考えてきたような圧力差はなかったのだ。
では、宇宙の中の物体、例えば地球上の東京と大阪の距離は、空間とともに膨張するのかと言えば、実はそうではないようだ。分子間力などの複数の力の均衡で大きさが決まっているものは、伸びも縮みもしていないのだ。伸びているのは、銀河団の平均距離なのだ。ちなみにわれわれの太陽系は、銀河系という約2000億個の星の集団の一部を構成している。 宇宙には銀河系と同じような星の大集団(銀河)が多数存在している。銀河の大きさは、どれも非常に大きく、アンドロメダ銀河は直径が20万光年を超える大きさを持っている。また、距離も非常に大きく、比較的近いアンドロメダ銀河でも、約212万光年の距離がある。平均距離といってもこれほどスケールの大きいものなのだ。
宇宙膨張の速度については、米国の天文学者ハッブルが1929年に、遠ざかる速度は、銀河と私たちとの距離に比例ことを発見した。これをハッブルの法則という。
この膨張速度は、原子のスペクトルのパターンは、地球上の研究室で観測されるのも、遠くの銀河団から来るものも同様だが、遠方の銀河から来るものは、波長の長い方向にずれていることから測定された。
では、光の波長を引き伸ばすものはなにか。従来の人類が慣れ親しんできた、救急車が遠ざかっているとサイレンの音が低くなる原理、すなわちドップラー効果では説明できないのだ。空間が固定した救急車の例と違って空間が膨張しているため、光が伝わるにつれて徐々に波長が長くなると説明しなければならないのだ。
最後にこの膨張を過去に向かってさかのぼってみるとどうなるかを考えよう。すると、宇宙のどの領域でも収縮が起き、終には宇宙全体が激突する。これがビッグバンである。
この段階では、高温、高密度の1つの密集体であった宇宙がビッグバンにより100億~200億年前に無の状態から発生し、それ以来膨張しつづけ、それによって冷却され続けて、今日の地球を含む宇宙の多様なものが生物の進化のように形成されたのだという。
ちなみに現在の宇宙の平均温度は3°Kで、これをマイクロ波背景放射と言う。この放射は非常に高い精度で一様、かつ等方的で、とびぬけて大きいエネルギーを持つことがわかった。このことは、とても密度が高く熱いものだった昔の宇宙がその膨張につれて温度が下がり、3Kまで冷えたと解釈できることから、ビッグバン宇宙論を支持する論拠となっている。
なお、この膨張は、宇宙乗数を取り除いた一般相対性理論で理論化できるようだ。
(『情報技術で漢詩を読む』の監修者記)

参考文献:C. H.. Lineweaver &T. M. Davis, ビッグバンをめぐる6つ誤解, 日経サイエンスp16,06/2005
by itot7227ex | 2005-05-16 10:56 | 宇宙